西郷札

副院長 杉浦 琢 

今年のNHKの大河ドラマは、西郷隆盛を主人公にした『西郷どん』。なかなか見応えがある。その関連でいろいろ西郷隆盛のことをつらつらと調べていたら、『西郷札』という言葉が出てきた。「さいごうさつ」と読む。松本清張の出世作の題名でもあるらしい。早速読んだ。
内容の詳細な説明は避けるが、『西郷札』とは要するに西南戦争時の軍票である。その軍票に翻弄される人々の思惑についての描写が精緻で生々しい。
私事で恐縮だが、私は医学生になる前に経営学をかじり、銀行でほんの少し働いていたこともあり、貨幣論に大変興味がある。「こどもの肩たたき券」から始まって、今話題の「仮想通貨」まで、貨幣はいろいろとカタチを変える。
貨幣というものは保存ができ、持ち運びが手軽で、価値が普遍であるほどよいとされる。なるほど「仮想通貨」などは持ち運びの点では群を抜いているのだろう。「子供の肩たたき券」はかわいらしいが、普遍的信用は皆無である。
しかしながら私の知る内で最もなじみ深い貨幣は、やはり日本銀行券である。金塊は持ち運びが容易でないし、「仮想通貨」は普遍性や保存が不安だ。やはり私にとっては日本銀行券か、がんばって電子決済が関の山である。
では貨幣の本質とは何なのだろうか。最終的に貨幣はどういうカタチになるのだろうか。
あのホリエモンこと堀江貴文氏は「信用」と言っている。世間の信用を失って刑務所に入った彼が言うのだから、特有の妙な説得力がある。
世界一お金の使い方がうまいと言われたロックフェラーは、その資金でアフリカに病院を建てた。中世イタリアにおいて金融で巨万の富を得たメディチ家は、教会に莫大な寄附をした。そうして彼らは手に入れた富を一旦手放した。その結果世間の「信用」を得た。そして彼らの富は更に増殖した。
逆に悪銭は身に付かない。信用が伴わない方法で富を得ても、信用を失った分却って貧しくなる。悪銭ではないが、宝くじで大金を得た人のほとんどは、5年後大金持ちではないらしい。
話を元に戻して『西郷札』。住民に半ば強制的に押し付けて物資を購入する。そして最後は紙切れになる。旧日本軍の軍票も紙切れになった。西郷隆盛への期待と不安が軍票の価値を乱高下させる。
さて無理に医療に結び付けると、江戸時代、医療費は「薬礼」と言ったらしい。つまりは貨幣ではなく「お礼」を頂いた。明治になっても「医業は稼業にあらず。」と言って収入印紙など税金が免除されたこともあった。貨幣を介さずとも生命への畏敬と病への恐怖、そして医療への期待と信用が、絶妙なバランスを取っていた。
今、医療の世界にも「働き方改革」の名の下、様々な概念が入ってきている。時給云々、残業代はいくらという、貨幣にまつわる言葉がいよいよ医療の世界にも跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し始めた。貨幣には何の罪もないが、貨幣は人の心を容赦なく白日の下に曝す。果たしてその曝される姿や如何に。

(白帝ニュース平成30年6月)


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