残心について

副院長 杉浦 琢

先日、WBCで活躍した筒香嘉智選手がインタビューに応じているシーンを観ました。勝利に興奮しながら筒香選手からも勢いのある言葉を引き出したいアナウンサーが誘い水を向けますが、最後まで静かに自分のペースで応じます。それを見て私は「本当に武士のような人だ。」と感銘を受けました。彼の打席に立つ姿などにも同様のものを感じます。一度そういう目で観てみて下さい。
これは一体何だろう。と考えて思いついたのが「残心」です。
残心。あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、この残心こそが武士道を武士道らしくしている、武士道の真髄、武士道の奥義だという人もいます。
残心とは勝負が決してからの心のあり方だそうです。勝負が決まっても油断をせず、相手のどんな反撃に対しても対応できるような身構えと気構えを、常に心がけることを表します。多くの武道に共通する心身の構えのようです。
たとえば弓道における残心は、矢を射った後も心身ともに構えと集中力を崩さずに、目は矢が当たった場所を見据えることになります。空手や居合道では技を行なった後、特定の体の構えを取る、相手との間合いを測って反撃方法を選ぶ、一拍おいて刀を収める、といった一挙手一投足を残心と呼ぶそうです。
残心のある試合は、気迫に満ちながらも静謐(せいひつ)を保ったまま終わります。「勝っておごらず負けて悔やまず。」を勝負の直後から始め、常に節度ある態度を堅持するということでしょうか。
実は武道だけではなく茶道にも、残心という教えがあるそうです。千利休の師である武野紹鴎に、「なにしても 道具置きつけ 帰る手は 恋しき人に 別るると知れ」という教えがあるそうです。物事が終わって所定の位置に戻す時、つい終わったという安堵から気が抜けてしまい、次の行動にと気が急いでしまう。そうすると点前に緊張感が無くなり、席中の雰囲気も台無しになる。そこで武野紹鴎は道具を置いたその手は正に恋しい人と別れを惜しむが如く心をそこに残せ、とのことだそうです。
一会の茶会を催す時、亭主は迎える客の為に誠心誠意尽くします。正に「おもてなしの心」です。道具はもとより、玄関先から庭周り全てにこの心を尽くします。それはまぎれもなく思いやりの心でしょう。そして、会が終わり客を見送った亭主は一人茶室に戻り、今日の茶会を見つめなおし、一服のお茶を喫して客に思いを馳せるそうです。その心もまた「残心」であり、「一期一会」の心でしょう。
このことは我々の日々の診療にも言えることだと思います。ひとりの患者さんの診察を、その患者さんが診察室を出るまで声を掛け、その患者さんのことだけを考える。病院で言えばそれぞれの患者さんが病院を出られるまで声を掛け、しっかりと最後まで見送るということでしょうか。
私たちは日々忙しく、自分のことばかりで、他を思いやることなどあまり無いかもしれません。しかし、元来他を思いやる心を私たちは当然のように持っております。その心をこの「残心」という言葉から想い起したいと思います。


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